前回の続き
安田記念2018・クソ展望②・出走馬の格をランク付け。実績馬の巻き返しはとっても怖い
古馬G1で勝ち負けするには格が必要です。過去の結果を見るとよくわかります。
しかし、格があればそれだけで通用するわけではありません。何かしら理由があります。
実際に馬券になった馬には、馬券攻略に役立つ重要なヒントが隠されているかもしれません。
過去5年の結果を振り返りつつ、格が及ぼす影響を分析します。
過去の安田記念の結果からわかる格の重要さ
振り返る前に、格と実績の関係を紹介します。これは私が勝手に決めた基準ですが、それなりに役に立つと思います。
G1で馬券になるために必要な格。実績との関係
G1で2着になるなら……:G2で1着以上
G1で3着になるなら……:G2で2着以上
世の中だいたいこうなってます。何の実績もない馬がこの壁を突き破るのは相当困難です。
G2で2着の実績だけではG1で2着になるのは困難。
G3で1着の実績だけではG1で3着になるのは困難。
ということになります。
※詳細→格付ランキングチェック表
以下、過去5年での興味深い結果を振り返っていきます。
この表と合わせて観るとわかりやすいと思います。
→安田記念・過去5年データと穴馬の傾向
2017年1着サトノアラジン
1着サトノアラジンはこの時点での最高実績が2016年京王杯スプリングカップ1着。G1で2着になる格を持っていました。
前走は京王杯スプリングカップで9着に凡走。これによりストレスなく本番を迎えて激走。晴れて壁を突き破ってG1ホースに上り詰めました。
この年の1番人気はイスラボニータ。最高実績は2016年マイルCSの2着。優勝する格を持っていました。しかし、前走は最悪の前哨戦マイラーズカップで1着とストレスを残して本番を迎えて凡走してしまいました。6歳という高齢で臨戦過程が悪いのは普通に考えてあまりうれしくありません。
2番人気のエアスピネルは。最高実績は前走2017年マイラーズカップの2着。3着になる格を持っていました。しかし、最悪の前哨戦のせいで5着敗退。
2016年1着ロゴタイプ
2013年の皐月賞馬。以降は低迷し、2016安田記念を迎える時点での最高実績は2015中山記念(G2)の2着。前走はダービー卿CT(G3)で4番人気2着。
実績も足りないし、ステップもよくありません。この状況ならばせいぜい3着、最高で2着がいいところです。ではなぜ、勝つことができたのでしょうか?
答えは「逃げたから」でしょう。
逃げるというのは、それだけで全てを覆す可能性を秘めた強烈な作戦です。常にゴールに一番近い位置にいながら、不利を受けることがない。めちゃくちゃ有利です。
しかし、逃げることが最善策となるかどうかは馬次第であり、向いていない馬もいます。ロゴタイプには逃げ馬の才能があったのです。そう捉えるしかありません。
しかも、いつも逃げるわけではなく、前走先行策からの逃げだからこそ、威力がある。
1番人気モーリスは、香港帰りで東京競馬場で調教しないといけないという不利な状況でした。モーリスもやはり馬だったということなのでしょう。
2015年1着モーリス
1着モーリスの最高実績は2015ダービー卿チャレンジトロフィー(G3)1着。G1で3着以内に入るのも奇跡という格下の存在。なぜ突き破ったのか。
この馬は「怒涛の連勝中」でした。思い込みではなく、実際に「勢いがあった」のです。ダービー卿CTはごちゃつく中山マイルなのでうまく立ち回った馬が勝ちやすいレース。にも拘わらず、出遅れて外からまくって直線だけで3馬身差をつけるという訳のわからない圧勝。
こういう馬であれば、格なんて関係ありません。「圧倒的に強い」という可能性に賭けてオッケー。
逆に、マイラーズカップで「末脚を活かして快勝」というのはまさに大箱競馬の必勝パターンなので、それほど価値はありません。
2着ヴァンセンヌの最高実績は2015京王杯スプリングカップ(G2)2着。G1で3着以内に入る格を持っていました。
ここが初G1。前走京王杯で上がり最速で2着という絶妙の内容。安田記念で馬券になりやすいパターンでした。
3着クラレントの最高実績は2014京王杯スプリングカップ(G2)2着。G1で3着以内に入る核を持っていました。
これまでは賞金不足だったためどんなレースも全力投球して本番で息切れという感じでしたが、この年の安田記念ではついに「連続凡走でストレスも疲労も0」という状況で出走が叶いました。
格は持っているので、あとは自分の実力をフルに発揮するだけ。問題は加齢による衰えがあるかどうかという一点のみ。
2015年は上位馬が崩れた
ヴァンセンヌもクラレントも額面上はG1で馬券圏内に入る資格を持っていました。
しかし、何かしら後押しがないとうまくいかないのがG1です。
この年は上位人気に推されていた馬の不安が露呈されたことが大きかったでしょう。
2番人気のフィエロは前走マイラーズカップで3着(1番人気)。一見凡走なのですが、内容はクビ差クビ差の接戦であり、ストレスが残っていた可能性があります。マイラーズカップはそもそも相性が悪いですし、どうせならもっと派手に負けておいたほうが良かった。
危険というほどでもないし、勝ち負けになってもおかしくないのだけれど、「軸で間違いなし!」という鉄板の存在ではありませんでした。結果的には僅差の4着ですから、運も悪かったと思います。
4番人気のミッキーアイルは黙って逃げれば良いものを、カッコつけて好位差しの競馬を身に着けようと迷走していた時期。
5番人気ダノンシャークは7歳。前年のマイルCSで待望のG1制覇を成し遂げた後のシーズン。もはや上積みは期待できない馬。ギリギリでG1を勝つような馬が何度もそれを再現するというのはなかなか難しい話。
6番人気のリアルインパクトも7歳。前走はオーストラリアのG1で2着。安田記念を勝ったことがありますが、それは3歳のときの話。海外帰りで鮮度があるので来てもおかしくはありませんが、来なくても驚かない馬。
このように、「可能性はあるけど来なくても文句は言えない」みたいな馬が軒並み崩れてくれたことが、ヴァンセンヌとクラレントの好走を支えていたということがわかります。
2014年1着ジャスタウェイ
この年はジャスタウェイ、グランプリボス、ショウナンマイティとG1で連対実績のある馬が上位独占。格がそのまま結果に反映されました。
2番人気ミッキーアイルの最高実績は2015年NHKマイルCの1着。3歳G1勝ち馬なので、古馬G1なら2着までは来られる格。
極悪馬場に泣かされた部分もあります。「人気の逃げ馬」という問答無用で不利な立場もきつかった。目標としいたレースの後にさらに一段レベルが上がるG1というのも大変。
3番人気ワールドエース。最高実績は2014年マイラーズカップ1着。G1なら2着まで来られる格を持っていました。
しかし、これまた最悪の前走マイラーズカップ組。その前が白富士S1番人気5着と凡走、その後マイラーズカップで3番人気1着と激走しているので反動が怖い。明らかに流れが悪く、辛かったと思います。
4番人気グランデッツァ。最高実績は2012年スプリングステークス1着。古馬G3の1着と同程度なので、G1なら3着に来られる格。
しかし、前走は京都芝1800mの都大路Sをレコードで快勝(5番人気)。反動が怖すぎる……。
このように、上位人気馬がみんな前走激走しています。
それに対して、G1連対実績があるグランプリボスは休み明けでフレッシュな状態、ショウナンマイティは前走大阪杯で5着(4番人気)であり、力を発揮しやすい臨戦過程でした。
格を生かすには、「疲労もストレスもない」状況がとても大切であることがわかります。
2013年3着ダノンシャーク
この時点でダノンシャークの最高実績は2012年マイラーズカップ2着。なので、安田記念で3着ならば全然おかしくない馬です。2着だとミラクルという位置づけ。
1年前にG1で3着になる実績を獲得しており、直前のレースではマイラーズカップ3着。速い上がりを使うでもなく、逃げたわけでもなく、まさに可もなく不可もなくという走りを経て安田記念に出走。
疲労・ストレスもそれほどなく、あとは自分の実力を発揮するだけ。周りが崩れてくれればなお良し。という状況でした。
2番人気のグランプリボスは最高実績が2012年安田記念2着。G1で勝ち負けするだけの格を持っています。
前走は痛恨のマイラーズカップ1着。酸いも甘いも経験した古馬。若くない、つまり勢いを武器に戦えない馬が本番前に激走してしまうと何も良いことがありません。
4番人気カレンブラックヒルは最高実績が2012年NHKマイルCの1着。G1で2着になれる格を持っています。
前走はダービー卿チャレンジトロフィー1着(5番人気)と勝ってしまいました。
デビューから毎日王冠まで5連勝していましたが、それも今は昔。勢いを使えない馬は本番前に勝っちゃいけないのです……。
まとめ
古馬G1で好走するには格が必要だということがよくわかりました。
しかし、格があってもローテーションが悪いと簡単に凡走します。それがサラブレッドです。
逆に、走れる状態にあったとしても、格が足りないとそもそも勝負になりません。
まずは出走予定馬の最高実績を調べてみて、人気とギャップがないか、確かめてみてください。
3歳限定重賞と古馬混合重賞を区別するのは密かに重要ポイントだと思います。
→格付ランキングチェック表
→安田記念・過去5年データと穴馬の傾向
→安田記念2018・クソ展望②・出走馬の格をランク付け。実績馬の巻き返しはとっても怖い
→安田記念2018・クソ展望①・過去の傾向から買える馬、消せる馬