皐月賞の穴馬には、共通する鉄板ローテーションがあります。
それは、延長後の同距離です。今井雅宏さんのMの法則とか、亀谷敬正さんのチェンジ・オブ・ペースとかで良く出てくる話ですが、過去の皐月賞で穴馬を開けた馬の戦歴を眺めていると共通項としてあがってきます。
これって知っている人はよく知っているので当たり前の話ですが、知らない人もいると思うので紹介します。
穴馬の鉄板なんておかしな話ですが、穴を開けている馬のローテーションは概ねこうだよ、ぐらいの話で読んでもらえれば。
ローテーションといっても前走弥生賞がいいとか、スプリングSがいいとかっていうことではなくて、もっと大雑把です。だけど、意外と本質を付いているのかなと思ったり。
延長後の同距離
延長後の同距離というのは、例えば、前々走1600m→前走2000m→今回2000mというパターンです。
Mの法則では、競走馬は延長が嫌いだということになっています。前走より長い距離を走ると疲れるからです。逆に短縮は好む。もちろん例外もありますし、馬によります。ただ、基本的にはそうだよ、ぐらいの感じです。
3歳春のサラブレッドにとって2000mのレースというのはそれなりに辛いもんです。1600mからの延長となれば尚更。だから1600m→2000m→2000mの流れで言うと、最初の2000mは相当辛い。一度つらい思いをしたので最後の2000mは苦→楽の流れになって激走しやすくなるのです。
次は具体例を。
過去の激走馬
2014年3着ウインフルブルーム
直近は2014年のウインフルブルームです。
この馬のローテーションは、シンザン記念(1600m)→若葉S(2000m)→皐月賞(2000m)でした。さっき紹介したパターンと一緒ですね。
大外18番枠から先行して3着に粘りこみました。2歳時の朝日杯FSで差し切られたアジアエクスプレスを逆に抑え込んだのが印象的でした。
皐月賞の穴馬はだいたい先行馬ですが、ウインフルブルームのように延長後の同距離ローテであればより好走率が高まるんですね。楽に先行出来るようになる訳ですから納得がいきます。
これに乗じて2015年にクラリティスカイを狙った人は多かったのではないでしょうか。私もそうでした。
結果、皐月賞はダメでその後短縮でNHKマイルCを快勝。クロフネ産駒ですからね・・・短縮の方が良かったんでしょう。
ウインフルブルームの父はスペシャルウィークですから距離の融通というか、中山2000mでの好走は十分期待出来ます。おまけに母父はサクラユタカオーだったのでそっちを見るべきだったっていう・・・(2015年の3着馬キタサンブラックの母父サクラバクシンオーの父はサクラユタカオー)
2009年2着トライアンフマーチ&3着セイウンワンダー
この年は両方差し馬なのですが、共に人気以上に走りました。
トライアンフマーチは、
未勝利(1600m)→若葉S(2000m)→皐月賞(2000m)
セイウンワンダーは、
朝日杯FS(1600m)→弥生賞(2000m)→皐月賞(2000m)
ロジユニヴァース、リーチザクラウン、アンライバルドという順で3強が人気を集めましたが、激しい先行争いでロジユニヴァースとリーチザクラウンは脱落大敗。アンライバルドが4コーナーでワープして圧勝。
ロジユニヴァースはそれまで4戦4勝、リーチザクラウンは5戦3勝2着2回、前走きさらぎ賞を圧勝していましたが共に先行馬だったためマークがきつくなってしまったのが敗因のひとつでしょう。まさかこの2頭が揃って潰れるとはみんな思ってなかった。なんだか今年の状況に似ているような似ていないような・・・
ちなみにアンライバルドとリーチザクラウンは、ブエナビスタ、スリーロールスと共に伝説の新馬戦を走ったメンバーです。
↓伝説の新馬戦(京都芝1800m)
1着アンライバルド:皐月賞
2着リーチザクラウン:ダービー2着、きさらぎ賞、マイラーズC
3着ブエナビスタ:桜花賞、オークス、ジャパンカップなど
4着スリーロールス:菊花賞
すごいですね・・・。ちなみにちなみに、ローズキングダムとヴィクトワールピサがワンツーした新馬戦もこれと同じ時期、同じ条件のレースです。
2008年1着キャプテントゥーレ
2008年の皐月賞を逃げ切ったキャプテントゥーレも延長後の同距離パターン。
朝日杯FS(1600m)→弥生賞(2000m)→皐月賞(2000m)でした。
この馬は先行してそこそこ粘るんだけど決め手がなくて、強いのか弱いのかよくわかんない感じでしたが、必殺ローテーションによって覚醒しました。差し馬が人気になりやすい中でこの馬を評価するにはこのローテーションに着目しないと難しかったかもしれません。
ちなみに2着のタケミカヅチも延長後の同距離。
共同通信杯(1800m)→弥生賞(2000m)→皐月賞(2000m)。
バウンド延長もあるよ・・・
ちょっとだけおまけで、延長後の同距離とは別にバウンド延長もまた味わい深いローテーションです。
バウンド延長は2000m→1600m→2000mみたいな話。前走忙しかった分追走が楽になるのがメリット。スタミナの裏付けさえあれば、スピードに乗って走れるので性格的にズブい馬なんかは効果が期待出来ます。
先に挙げたキタサンブラックやアンライバルドと、2007年2着のサンツェッペリンは、2000m→1800m→2000mという流れでした。使っていたトライアルレースはスプリングSです。
スプリングS組はそれ以前に使われていた距離に関わらず皐月賞の成績が良いので注意が必要なんですけども。
まとめ
近年の好走馬を眺めるとマイラーが多いことに気づきます。イスラボニータやロゴタイプ、ワールドエースにサダムパテックと、後に1600mの重賞で活躍する馬の名前が並びますね。
基本的にはスピード重視、だけどそれだけではいけない。皐月賞が行われる中山芝2000mは小回りなので、機動力がある馬の方が有利です。勝負どころで置いていかれないとか、早めに良い位置につけるとか。
マイラーとしての素質があるんだけどちょっと実力が足りない穴馬が激走するためには、スタミナを補完する『延長後の同距離』ローテが有効にはたらいている、なーんて考えると収まりが良いですよね。
ローテーションだけで全てが解決するわけではありませんが、予想の補助にどうでしょうか。